デザイン思考とは何か

  
昨今注目されているデザイン思考。それはプロダクトやサービスの開発などのビジネスの現場において、デザイナー感覚の思考法を取り入れるというもの。
デザイナーの感覚というと掴みどころがないが、それを体系化して形式知化したものがデザイン思考である。

真のデザイナーからすればそんなフレームワーク的なものはデザイン思考ではないと言われそうだが、ロジカルに考えることを求められがちなビジネスパーソンにとって違ったものの考え方を知っておくという点ではデザイン思考を学ぶ価値はある。
デザイン思考とは何かについてざっくりと概論を紹介する。

デザイン思考の特徴

デザイン思考によるアプローチと対局にあるものが分析的アプローチである。
分析的アプローチでは現在の延長線上の発想しか生まれず、イノベーションを生み出すには不向きである。
世の中、イノベーション、イノベーション言い過ぎな感じはするが、通常の思考では行き詰まりを感じ、非連続な発想を求める場合にデザイン思考が威力を発揮する。

デザイン思考は直感やイメージの具現化がポイントだが、直感力と言っても個人差があるがデザイン思考ではある程度フレームワーク化されているので紹介する。

デザイン思考のフレームワーク

デザイン思考とは、詰まるところ、観察、コンセプト作り、モデル化の3つを粗く高速に行ったり来たりしながら進める思考法である。
従来のウォーターフォール的な思考ではなく、アジャイル的な思考というわけだ。

デザイン思考のフレームワークを図示化したものがこれだが、これ以上でもこれ以下でもない。これが結論だ。
3つの作業プロセスの中心に「目的」があることが実は重要である。

例えば、雪の結晶のように美しいデザインだが人がデザインしたわけではなく自然の働きで偶然作り出されたものをデザイノイドという。

デザイノイドは幾何学的に優れていたとしても、偶然の産物であってそこに目的は存在しない。
もちろん科学的な合理性を突き詰めていけば目的があってその形に落ち着いているのだと思うがここでは人間的な観点で考えていく。

デザイノイドとデザインの決定的な違いは目的がある点である。デザインは人間が何らかの目的を持って意図して作り出すものである。
つまり目的を持って、3つのデザイン思考プロセスを実行しなければならない。

デザイン思考プロセスの観察

デザイン思考の3つのプロセスのうちの1つの観察について説明する。
分析的アプローチとデザイン思考は対極と言いながらも、観察という行為は極めて分析に使いと個人的には感じる。

デザイン思考における観察のポイントは次の4点。

・不満や欲求を見つける
・実在の人物にフォーカスしてその視点を観察する
・変化をみつける
・無いものをみつける

特に不満、欲求のところは本人も慣れてしまって感じていない無自覚な不満、潜在欲求を観察によって見つけられれば非常に良いらしい。
マーケティングをミクロな視点でやりましょうというだけの気もするが、人間中心で感情に着目して観察しましょうということである。

デザイン思考プロセスのコンセプト化

コンセプトとはユーザーが得られる中核的な価値を端的に表したもの。
コピーライティング的なスキルとも似ているかもしれません。

観察によって得られたもやっとしたニーズやアイディアから短い言葉で価値を表現するのがコンセプト化です。
あれこれ細部にこだわらずに、ズバッと一言で価値を表現することが重要です。多少のツッコミどころは無視して考えるのがポイントです。

有名な例でいうと、ディズニーリゾートの「夢と魔法の王国」というコンセプトです。
ディズニーリゾートのサービスやプロダクトはアトラクションとかショーとかお土産ですが、それらの根本的な価値は「夢と魔法の王国」という現実を忘れられる空間が提供されていることであり、それを短い言葉でわかりやすく表現しています。

コンセプトを考える際のフレームワークフレーズがあるので紹介します。この定型文で価値を説明できればそれがコンセプトになります。

「(方法)をすることで、(ユーザー)が(価値/利点)を得ることができる(サービス/プロダクト)」

この定型文にディズニーリゾートの例をあてはめてみます。

「(入場)することで、(来場者)が(現実世界を忘れる)ことができる(遊園地)」

これはディズニーのコンセプトそのものを当てはめたものですが、個別のサービスやプロダクトを考える際にも使えます。
タワー・オブ・テラーの価値は?カチューシャの価値は?チュロスの価値は・・・?何でもかんでも使えます。

またコンセプト作りにはメタファーを使ったほうが発想の拠り所ができてコンセプト化しやすこともあります。

例えば、「とにかく何でもいいので新しいアプリを作って」と言われるよりは、「青空のようなアプリを作って」と言われる方が、パッと聞くと最初は若干意味不明ですが、後者のようにとっかかりがあるほうが考えが行き詰まりにくいです。

デザイン思考プロセスのモデル化

コンセプトに形を与えることがモデル化です。
粗くても陳腐でもいいのでとにかく、まずは形にしてみて目に見えるようにすることが大事です。
形になることで、頭の中で考えていた時には生まれなかったインスピレーションが生まれ新しいアイディアに繋がっていきます。

「粗くても陳腐でもいい」と言いましたが、正確に言うとモデル化は粗くて陳腐な方がいいです。
完成度が高くなればなるほど、捨てたり修正したりするのが億劫(もったいない)になります。
そのため、むしろモデル化は雑な方が次々に作り直されて、新たなインスペレーションをもたらしてくれるのでベターです。