稲盛和夫の著書「生き方」を読んで

  

稲盛和夫の思考から学ぶ

稲盛和夫の名言はググればキュレーションされた情報がたくさん出てくるが、名言の切り取りではなく本を一冊読んでその名言に至る文脈も理解しようと「生き方」という本を読んだ。
備忘として印象に残ったキーワードをメモ。

これまでお会いしてきた経営者の方々の多くから「最も重要なのは実績や実力ではなく人格」という言葉を聞いてきた。
この考え方は、上場企業の社長から中小企業の社長まで会社の大小に関わらず多くの人に共通していた。

この言葉には「なるほど」と思い、人格を磨いてこうと日々精進しているものの、人格とは何か自問自答すると意外とその答えは難しい。人に説明すのもやや困難である。
稲盛さんはこの本で人格を以下の通りに定義していた。

人格=性格×哲学

性格とは先天的な気質のことで変えられないものであり、哲学とは生きる中で後天的に身につく自分なりの人生哲学であると説明していた。
性格が変えられないものとうのは私の考え方と違うが、それはおそらく性格という言葉の定義の違いであると思う。
稲森さん的には、嫌いなことばかりやっていると苦痛に感じる、好きなことをやっていると楽しくなるとかそのレベルのことを性格と言っているのかもしれない。

哲学という言葉も難しが、人生の中で自分や社会に対して起こる事象に対してどう解釈するかが哲学であると私は理解している。
例えば階段から落ちて足を怪我した時に、「足を怪我して運が悪い」と解釈するか、「頭を打たなくて良かった。運がいいな」と解釈するか、それが後天的な哲学であると考えた。
ざっくり言ってしまうと「気の持ちよう」ということだと思うが、目の前で起こる事象に自分がどう意味付けるかはとても重要である。

人格というとその人の「考え方」が反映されたものとこれまでは漠然と考えていたが、「考え方」がここでいう哲学だとするならば、人格イコール考え方では不十分ということになる。
自らの先天的な性格の良い点も悪い点も理解した上で、それにマッチするような考え方を持つことが優れた人格を作るのだと感じた。

次に、稲森さんなりの成功についての定義も紹介されていた。

成功=考え方×熱意×能力

これまた抽象的である・・
人格の定義の解釈のところで「哲学」≒「考え方」として腹に落とした自分としては、このタイミングで「考え方」というキーワードが出てきて混乱している。

ざっくり噛み砕くと、考え方とはポジティブシンキングを持つということ。達成できると考える(信じる、思い込む)ところから全ては始まるという点だ。
これは精神論的な話だが、実際に成功に向けてチャレンジするプロセスでは楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行するというマインドが必要とのこと。

熱意は一般的なイメージと同じような意味合いで稲森さんも使っており、現在は出来なくても将来はできるかもと思って諦めずに挑み続けることである。

また、能力について、仮に才能に恵まれたとしても、才能は私物化しては開花しないと説明していた。
利他に徹すれば視野が広がるとのことで、才能は自分以外のために使おうとした時に初めて能力として発揮される。

稲森さんの半生を辿りつつ他にも様々な内容が盛り込まれていたが、じっくり考えさせられたのは「人格」と「成功」の定義についてでした。

「生き方」というタイトル通りハウツー本ではなく全体的に精神論的な内容です。
それに絡んで印象に残った話は、日本は戦前、道徳教育が悪用されて思想教育となり戦争に向かってしまった黒歴史がある。そのため、戦後の日本では思想教育がタブー視されてしまっている。
しかし、道徳教育に力を入れて人格を狙って育てる教育が必要とのことでした。
これについては戦前の歴史を知らない私はなるほどと感じました。

参考文献:生き方(稲盛和夫)2004年