サラリーマンが知っておきたい人材育成のポイント

  

管理を知らない管理職がはびこる日本企業

日本の企業、特に大企業では、新卒一括採用で入社した”新人”が同期横並びで会社人生をスタートすることが一般的。入社後は配属されたそれぞれの領域でプレイヤーとして実績を挙げた者が昇進していくという人事システムが多いのではないでしょうか。
プレイヤーとして成果を上げることとマネージャーとして成果を上げることは全く別の能力が必要であるにも関わらず、それに気づかずに管理職になってもプレイヤー時代の延長の働き方で伸び悩む人を多く目にします。
管理職に求められるものは大きく2つで、1つは仕事(プロジェクト、チームなどひっくるめて)のマネジメント、もう1つは人材育成です。そのうちの人材育成について、サラリーマンなら抑えておきたい人材育成のコツをご紹介します。

人材育成とはなにか

まずは管理職に求められる二大要素の仕事のマネジメントと人材育成を比較して考えてみます。
仕事のマネジメントとは、与えられたリソース(ヒト・モノ・カネ)の中で最大限の成果(目標とする成果)を出すことです。つまり、メンバーのスキル、設備や環境、予算、時間などが十分ではない場合でも、与えられた制約の中で成果を出すためになんとかすることがマネジメントの本質です。
一方で、人材育成とは制約の中でなんとかすることを考えるのとは逆に、人の能力という点に関して制約を取り払っていく行為です。もちろん、教育環境には制約がありますが。
管理職として何気なくやっている仕事のマネジメントと人材育成には相反する面があることを意識することが重要です。
OJTの中でなかなか部下が育たないのは、プロジェクトの制約(リスク管理)の中で、チャレンジングな役割や仕事が与えられていないことが原因のことがあります。
ガムシャラに仕事をしていく中で勝手に育っていく優秀な部下も中にはいますが、狙って育てるには仕事のマネジメントと人材育成の性質を見抜いた上で意識的にジョブアサインしなければいけません。

教え方を教えない日本の会社

日本企業はプレイヤーとして優れた者がマネージャーになる昇進システムであることは先に紹介したとおりですが、その考え方の延長として、プレイヤーとして成果を出した人は成果の出し方を知っているのだから当然人材育成も出来るという思い込みが蔓延しています。
その人自身が培ってきたものを部下に教えればいいだけという発想です。

しかし、人材育成とは頭のなかにあるものをやみくもに伝えるだけではあまり効果が期待できません。「教え方」や「学習」という概念を科学的に捉えた上で、育成を効率よく確実に進めるためには、どのように準備し、どのように教えていけばよいかを立ち止まって検討しなければいけません。
しかし、部下への「仕事の教え方」を教育してくれる企業はなかなかありません。
では、具体的にどうすれば良いか?そのアイディアを紹介します。

人材育成計画書を作成

やみくもではない人材育成の方法として、ぜひ提案したいのでが人材育成計画書の作成です。少し型にはまった杓子定規なアイディアですが、きっちり運用すれば効果は抜群です。
1年や半期に一度、部下と上司で人事面談や評価のフィードバックのような場を設けている企業は多いですが、形骸化した雑談の場になっている企業も少なくないようです。

では、人材育成計画書とは具体的にどのように作り、どのように運用すれば良いのか紹介します。
まず、人材育成計画書に記載すべきコンテンツは以下のとおりです。
①狙って育てたい部分の目標設定
②達成の具体的な定義
③期限
④それができると会社、チームにどんな貢献となるか
⑤上司、周りのメンバーからのサポート内容
⑥報酬

これらを抜けもれなく整理します。作成は上司と部下で話し合って認識を合わせながら作成しましょう。どちらかが一方的に作成するだけではダメです。

目標設定については特に説明は不要と思いますが、注意点は1つの目標は1つの内容に分解することが必要です。複数の内容が含まれていると達成度の評価が曖昧になるためです。
例えば「会議の議事録は会議後1日以内に作成して展開し、出席者から誤りの指摘は2件以内を目標とする」という目標はNGです。
一見すると議事録をきっちり書けるようになることを定量的に具体化して良い目標のように見えますが、議事録展開までのスピードと正確な内容で作成できるようになることの2つの目標が混在しており、どちらか片方だけしか出来なかった時に評価が難しくなります。

達成の定義については、目標と対になるように設定し、定量的に評価できる内容が好ましいです。しかし、必ずしも定量化出来ない目標もありますが、そういった場合の対処法は上司、部下が双方共通認識となる達成の定義を設定すればOKです。

期限も忘れずに設定します。人材育成は長い目で見ないといけない部分もありますが、期限なくては勝手に育つのを待つという状態になってしまいます。

貢献について整理するのはやらされ感をなくすためです。上司にとって成長してもらいたい部分でも本人がその必要性を感じられないとやらされ感が出てしまうので、その成長によってチームや会社にどのように貢献できるのかを明示することがモチベーションの維持に繋がります。

最後は報酬です。いちいち報酬がないと頑張れない部下はそれはそれで問題ですが、しかし人間なので報酬系がないとモチベーションも上がりません。少し育ったくらいで昇給や昇進は難しいですが、ここで重要なのは報酬として設定したことに対して必ず約束を守ることです。報酬が小さいか大きいかは余り重要ではありません。
軽く一杯とかでも良いので、達成した場合には人材育成計画書の作成時に設定した報酬の約束を必ず守ることで、部下が目標をコミットしたら上司も約束をコミットする姿勢を見せることで次の人材育成に繋がっていきます。

今回はやみくもではない人材育成とはどうすればいいかという点について人材育成計画書の作成というアイディアを紹介しました。
とは言え、計画を作成したものの相手は人間なので計画通り順調にいかないことも多いのが実際です。次回は、日々の育成における工夫のアイディアを紹介します。