思考の整理術

多忙なビジネスマンに限らず、情報が溢れスピードが増す現代では頭の情報処理が追いつかず、考えを落ち着いて整理して判断できない場面が多い。巷に溢れるビジネス本を開けば様々なノウハウが紹介されている。そのノウハウさえも色々な方法が溢れすぎていて消化不良になる悪循環だ。私も様々なビジネス本のノウハウや周りの先輩方のテクニックを吸収して試行錯誤を繰り返してきた。長年かなり右往左往はしたが、これまで試してきたノウハウが凝縮された自分なりのシンプルな思考整理術に現在はたどり着き実践している。本記事ではその方法を紹介する。

思考整理の基本は可視化

人間が効果的に考えるための方法として、多くのハウツー本や脳科学の本で紹介され共通していることは情報を可視化することである。腕を組んで天井を見ながら頭の中でぐるぐる考えているのではなく、考えていることを書き出して、それを視覚的に見ることで考えが段々と整理されていくというものだ。

①情報のインプット→②頭のなかで考える→③アウトプットのサイクルを何度か繰り返す過程で思考が整理されて正しい判断(=アウトプット)が出せるのである。

しかし、なかなか考えがまとまらない、わかったようでスッキリしない人は、この①情報のインプット→②頭のなかで考える→③アウトプットのサイクルをまわさずに、②で止まってぐるぐる考えてしまっているパターンの人が多い。考えていることを目で見ることで、人の思考は驚くほど整理される。

アウトプット思考整理術

すでに種明かししたように、思考整理は①情報のインプット→②頭のなかで考える→③アウトプットのサイクルをまわすことである。そこで、実際に私が実践しているメソッドを紹介する。

まず基本となることは、とにかく考えていることをアウトプットすることである。私の場合はPCにとにかく思考を文字でベタ打ちする。その際に私は、Evernoteを活用している。というのも、必ずしもPCにの前に座っていることばかりではない。むしろ思考整理には電車の待ち時間や乗車中などちょっとしたスキマ時間を使うことが多い。Evernoteに記録しておけば、スマホからも確認・更新が可能なため、ちょっとしたスキマ時間でスキあらば思考の続きを出来るので便利だ。

また、スマホでは音声入力をフル活用している。実は歩いている時間というのは音楽を聞くくらいしかやることがなくかなりのデッドタイムだ。かといって歩きスマホは危険なので、私はイヤホンマイウを活用して思考をどんどん音声入力していく。声を出せない場所では使えないが、指のスマホ操作で入力するよりも格段にスピードが速いので便利だ。

アウトプットの棚卸し

①情報のインプット→②頭のなかで考える→③アウトプットのサイクルをまわすことが基本なので、タイピングと音声入力で考えを吐き出しただけでは完了しない。そのアウトプットしたものの棚卸し(=再度のインプット)が必要だ。ここでもコツがあり、急ぎで結論を出さなければいけないものを除いて、少し期間を明けて棚卸しすると良い。私の場合は週に1~2回の頻度で実施する。

実践してみるとわかると思うが、棚卸しの際に自分でアウトプットしたはずなのに、意味がわからないもの、思い出せないものが多々存在する。数日経ったくらいで忘れるようなことは重要ではない。そういったものは、今になって思えばどうでもいいということだったので、思い出そうとしたりそれ以上考えたりするのではなくバッサリ削除する。そして残ったものを読みながら、類似する項目はカテゴライズして整理してスリム化していく。すると思いのままにアウトプットした情報量が削ぎ落とされてエッセンスだけが残る状態になる。その絞られたエッセンスの情報をインプットとして、また同様のサイクルをまわしていく。これを2~3回やれば思考はクリアに整理されていく。

このメソッドのポイントは、棚卸しをあまり頻繁にやらないこと。ある程度時間が経って「これなんだっけ」「もうどうでもいいかな」という忘却や気持ちの冷えを利用するのが大事。

人間は感情的な生き物なので、その時の気分に左右されやすい。例えば、こんなケースを考えてみる。夜家でビール片手にとても見事に演出されたTV番組を見て「自分もDIYで部屋にピッタリの本棚を作ってみたい。でもどんなデザイン・機能の棚がいいだろうか。」と思ったとしよう。せっかく作るので後悔しないような最適なデザイン・機能を備えた本棚をじっくり考えようとその時はEvernoteにメモをした。しかし、その時はお酒の勢いとTVの素晴らしい演出でその気になりメモを残したものの、数日経って満員電車の中で冷静に考えてみると「別にそこまで今の本棚に不満はないし、そもそも本をむやみやたらに増やさないようにしてたんだっけ」とあの時の気持ちの盛り上がりはどこへやら、ということはよくある。
それはTV番組を見て本棚を作りたいと思ったことは記憶と記録に残っているが、感情が残るほどのものではなく数週間で忘れてしまうくらいのものだったということだ。このメソッドを使うことで、自分の思考を客観視できるため、考えを深掘りできるとともに、そもそも考える必要のないことを考えることから解放される。

思考が整理されたらさらに一歩進めてタスク化

思考のサイクルをまわすことで思考が整理できること、具体的にはPC、スマホからEvernoteに思いのまま考えを吐き出し、そしてスキマ時間も使いつつ定期的に棚卸しをしてサイクルをまわし思考を整理すること方法を紹介した。私の場合はさらに一歩進めてタスク化も実施する。

思考が整理されてすっきり理解できればクローズとなることも多いが、考えを整理した後にさらにアクションが続くことも多い。例えば何か仕事の課題があり、思考を整理した結果、解決の糸口が見つかったとしたら、忘れないうちにその場でTODO化してしまう。TODOまで落とし込めば、あとはやるだけなので立ち戻ってもう一度考えるということから解放される。これも不必要に思考することを防止することに一役買っている。

思考整理術というタイトルの割には、Evernoteに考えを思いのままに吐き出しまくって、後からそれをブラッシュアップするだけという拍子抜けするようなシンプルな方法だが、シンプルすぎるからこそ誰でもいつでも出来る方法でもあるのでぜひ試していただきたい。