とある豪腕経営者のお話

  
非公開の講演会のため講演者の氏名を紹介できないのが残念ですが、印象に残ったことをメモとして残します。
「豪腕の経営者」あたりでググれば有名な経営者が何人か出てきますがそのうちの一人です。wikipediaにも掲載されている人なので興味ある方は探ってください。

ジョブディスクリプションを明確にせよ

多くの日本企業にはジョブディスクリプション(Job description)が存在しないことが問題との指摘があった。
ジョブディスクリプションとは職務記述書、職務設計書と言われるもので、個々人の仕事内容やスキルを定義するものである。
私はジョブディスクリプションという言葉が初耳だったが、ドイツ企業の日本法人で働く友人に聞いてみたら、当たり前のように知っていた。

昨今の働き方改革で多くの企業では残業を減らすように号令がかかっているが、急に仕事が減るわけではないと反発の声がある現場も多いのではないだろうか。
そんな中で、「そんなに忙しいなら自分の仕事を書き出してジョブディスクリプションを作成してみなさい」と言ってみたら、ほとんどの社員がA4用紙1枚の半分も埋まらなかったと言っていた。
これは一例であるが、日本の会社は個々人のミッションが曖昧である場合が往々にしてあり問題だと指摘していた。

これには日本企業の雇用方式に原因があると分析していた。
日本は雇用の考え方が、ジョブ(仕事内容)ではなく会社に就くことである。いわゆる就職ではなく就社と言われるやつだ。
日本企業は、スキルを採用しているのではなくメンバーシップを採用している。
そのため、必要とされることは特定のジョブをコミットすることではなく、会社や上司の指示にコミットすることである。
そんなことはないと否定したくなる気持ちもあるが、親分がやれと言ったら何でもやるというそれはヤクザとさして変わらない。日本企業とはそういう場所だそうだ。

一方で、日本の仕事現場でもジョブディスクリプションがはっきりしている場所がある。それは医療機関だ。
医者、看護師、作業療法士、理学療法士、放射線技師、医療事務などなどそれぞれの専門家が明確にスキルを持ち、仕事の役割分担とミッションが明確になっている。
会社経営と医療現場ではそもそも異なることが多いかもしれないが、見習うべき点は多々あると思われる。

スキルのキャッチアップ

当たり前の話だがプロフェッショナルとして仕事をしていくためには相応のスキルを身に着けなければいけない。
しかし、世の中の変化のスピードが早くなり、技術や情報が陳腐化する速度が圧倒的に速い現代においては特定のスキルだけでは長年に渡り活躍することは難しい。

マネジメント論で有名なピーター・ドラッガーも次のような言葉を遺している。
「21世紀に重要視される唯一のスキルは、新しいものを学ぶスキルである」

要するに勉強し続けろという話です。つらいです。。

そもそも「卒業」という語源はラテン語の「コマースメント」という言葉らしいのですが、コマースメントとは「始まり」という意味だそうです。
つまり、学校を卒業して今日からが始まりだという話です。
いつの時代かはわかりませんが、それを終わりを意味する「卒」という漢字をあてて誤訳してしまったんですね。
それが「卒業」の意味を日本人に誤解させてしまっているようです。
小学校の次は中学校、中学校の次は高校と続きますが、いづれ学校を卒業して社会人になる時の卒業は、「これで学業終わり。勉強終了」という意味ではなく、「1ステップ区切りがついて今日からが新たな始まりとして、生涯学習を約束する」とも解釈できるわけです。生涯学習のくだりは勝手に付け加えてみましたが。。

要するに、ピーター・ドラッガーが言うように、新しいスキルをキャッチアップし続けるというのは当然のことなんですね。

スキルを磨くと言っても、その深さも問題です。
よく日本の会社では専門を聞かれると「○○畑」という表現をします。人事畑とか経理畑とか。
しかし、自分の会社の就業規則をすべて把握していない自称人事畑や財務三表が読めない自称経理畑など家庭菜園レベルの社員が日本の会社にはゴロゴロいると話していました。
新しいスキルのキャッチアップはもとより、そもそもの前提となる基礎を固めることができていない人はそこからという話でした。
さらっと言われてみれば当然ですが、我を振り返ってみると基礎硬めもゆるゆるだなと思い反省しました。